第130回直木賞候補作 生誕祭 - 馳星周

バブル期を舞台にした成金たちの狂騒と騙しあい。

鬱屈した日々を送るディスコの黒服(21歳男)が、金の亡者と化した幼馴染の元カノと再会し、物語は動きだす。

全編これもう金とセックスと嘘の話にまみれている。他には酒と暴力と数々のブランド品。ここまで金、金、金という小説は滅多にないだろう。ミナミの帝王よりも徹底してえぐい。裏切り合戦のケリはストレートに予定調和の内におさまり、その後のバブル崩壊でリセットされる。

最初は上昇していた主人公へ悪意とトラブルが襲いかかり、あっという間に八方塞がりとなるのは馳星周のこれまでの小説通り。しかし、これまでの暗黒小説と違ってラストには意外な優しさがあった。続編がありそうと思って調べたところ、同じキャラクターで10年後のITバブル期を描いた復活祭が2014年にリリースされている。