日本の漫画界にラブコメを定着させた一人である柳沢きみお。キャリアといい実績といい大御所といっても差し支えないのだけど、そう呼べないのはいつまで経ってもヘタクソな絵と、内容が説教か下世話か下ネタかつワンパターンな展開ばかりで幅広い年齢から支持されているような名作がないからか。
ドラマ化した特命係長だって設定からありがちだし、少しも面白い物ではない。唯一、最後まで楽しく読めたのはスキマで知った東京BJだけ。
氏のライフワークである大市民は、日本的なダンディズムと大人の余裕と見解を見せてくれていたが、巻が進むごとに文句と愚痴だらけとなり、酔って居酒屋でメートルぶち上げるサラリーマンの戯言レベルまで落ちてしまった。
ホリエモンをやたらと敵視していたのは金を持っている者への嫉妬なんだろうなあというのも透けていたのが哀れ。
散々嫌っていたネットと携帯電話(スマホ)にどっぷりハマっているのも過去のイキり続けた発言からすると情けなさがあるが、人は変わるものだし、死という最大最恐のイベントを身近に感じたら恥や外聞よりも実をとってしまうのは仕方がないというもの。
このがん闘病記は大市民の地続きではあるけど、酒と世相への愚痴を廃しているので珍しく落ち着いたトーンで描かれている。しかし、リンパへ転移がわかり、抗がん剤を拒否したあたりからまたしても恨み節と虚無が……年をとると楽しいことなどひとつもないという発言は病気が言わせているのだろうか?
作中では75歳だったが、いま調べたら氏は77歳。さて……
