ワキガは神が人類に耐えた試練なのか?

人がいるところで発せられる音と臭いは暴力になり得る。悪意の有無は問題ではない。

ある日、私が怠惰を貪っている職場へ一人の男がやってきた。配置換えだった。

その男は日によって業務が異なる場合があって、着任後数日して私の前の席に座った。

おや?

これは……

私は戸惑った。生理的に無理と思わせるあの臭いがした。すえた汗と腐りかけの肉、カブトムシの腹と発酵食品が融合した地獄の所産。

なぜ、こんなに臭う? マスクをしているというのに。

この男は、いったいどんな権利があって、私の鼻腔へこの凶悪なかほりを届けているのだろう? 

もしも、この世のすべての現象に意味があるならば、いったい彼のワキガに悩まされることは私に何の意味を教えようとしているのか? 


男が離席すると、私は一番下のキャビネットからリセッシュを取り出して床へ振りまいた。すみやかにケミカルな柑橘系の匂いが毒を誤魔化してくれた……

ときどき真剣に思うんだよ。

社会人のワキガは会社や地域の定期検診で当人に告げるべきではないか? 

と。

そして保険適用か、あまりに重篤な場合は国のオゴリで手術代を持つべきではないか?

と。

なるほど、「あなたはレベル◯のワキガです。手術をお勧め致します」と告げられるのは辛いだろう。

もし、私がそのような宣告をされたならば確実に落ち込む……ああ、今まで俺は醜悪でいやらしい悪臭をばら撒いて生きてきたのか……俺以外の人間にはバレバレだったのか……一体どれほど迷惑をかけていたのか……などと。

しかしながら、手術で改善もしくは軽減するならば絶対に受けたいと思うだろう。

だからこそ、早い段階で誰かが教えてやるべきなのだ。その筆頭は親と家族。次いで友達。あとは同僚やクラスメイトだ。

風呂に入らないといった怠惰により発生した悪臭は論外として、本人の資質により生まれた「ワキガ」にはおおいに同情の価値がある。

さあ、ワキガたちよ、早く治せ!

あと、ジムにいるワキガはクソ迷惑なのでワキガ専用ジムにでも行ってほしい。まじで本気でトゥルーでシリアスに。