脳出血を経験した監督の新境地 - ヴォルテックス - ギャスパー・ノエ


老いと死、病気と家族。国や時代を問わない普遍的なテーマ。

 

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画面を横に二分割し、それぞれ妻と夫の行動を描く。視点に二人とも映るときもあれば、左右が入れ替わったりもする。夫はなんとフェノミナサスペリアの監督であるダリオ・アルジェントが演じている。物珍しさはあろうとも、うろついたり、小便をしたり、着替えたりと、延々と老人の日常生活が続き、これはひょっとして駄作ではないかという印象が……浮かぶ。ただ、画面に二人分の情報があるので意外と退屈はしないということ。

ようやく物語が動き出すのは、二人の息子が訪ねてきてからだ。この男、まるでスティーブ・ブシェミミッキー・ロークがモーフィングしたようなイカした伊達男である。

ノエが造る悪意とブラックユーモアが好きな者としては、この作品から博愛主義、ヒューマニズムの作品ばかりを撮るようになったら残念に思うだろう。

願わくばこの作品をギャスパー・ノエの最初の作品にしないように。

鑑賞中に何度も思ったのが、夫の役をフィリップ・ナオンが演じていればということ。

後半からホラーじみた要素
面白さが格段に跳ね上がり、作品への集中力が増してくるのがわかる。