鬼門街 - 永田晃一

物語の骨子は、理不尽な暴力を受けて死にかけた主人公が鬼と取引して異形の力を手に入れる……といったわりとよくあるファウストタイプの漫画です。 1巻の最後にこの作品が描かれる契機となった現実の事件が作者より語られており、先を読み進めるのを一旦止めました。コミックの冒頭に記された故人と思しき名前をネットで検索すると、2013年に名古屋で発生した殺人事件とその裁判の経過などが見つかりました。『親友』をぼったくりバーの店員たちに無残に殺された作者の怒りと虚無は作品の至る所で根付いており、事件の詳細を知ってから読むとその無念と哀しみがより感じられました。