なぜいじめっ子は殺されたのか? - ジム・シュッツ 翻訳山口 和代

2001年にラリー・クラークが監督した映画『bully』の原作本。 93年にアメリカで実際に起こった殺人事件のルポ。 10代の若者たちがいじめっ子の友達を寄ってたかって謀殺するストーリー。実話。事件の構造としては船橋18歳少女殺害事件とかなり似通ってる。恨…

絶倫食 - 小泉武夫

発酵仮面こと小泉先生の作品。前半は虎の骨やヘビを漬けた酒とか、中国の皇帝や金持ちが食べるような高価な食材が連発。それからスッポンやうなぎなど日本人にも馴染みの深い食材が出てくる。んで、また歴史的な話と海外の話題へ。有名なマカや冬虫夏草も登…

エイリアン・インタビュー

マチルダ・オードネル・マックエルロイの 手紙と記録と 合衆国陸軍航空隊 機密公式記録文書……という設定のSF。冴えたアイデアもあるけど、そうはならんだろみたいなのも満載。

今度はITバブルで騙し合い - 復活祭 馳星周

前作から10年後、土地の代わりにIT会社の株価を軸に話が進む。資産家の娘も資産家の愛人だった女も金と若さを失い地味に生きている様子が前作との落差でなかなか悲惨。今作もノワールというよりエンタメなので、嘘とセットの裏切りのカードをどこで誰が切る…

愛死 - ダン・シモンズ

1993年の中編集。原題はまんまLovedeath。2つ目の「バンコクに死す」は脳が痺れるくらいぶっ飛んだ傑作。ねっとりした湿度高めの怪しいバンコクの夜を舞台に、究極の快楽に魅了された男の破滅を描いたおぞましくも美しいエロチックなホラー。wikiを見たら「…

憤怒 - G.M. フォード

濡れ衣を着せられた鬼畜を救え。8人もの女性を強姦のうえ惨殺し、ゴミ箱へ捨てた「トラッシュマン」。その容疑で捕まったのは性犯罪常連の男だった。死刑を6日後に控えた日、鬼畜逮捕のきっかけである9人目になりかけた女性が証言は嘘だったと告白し、物語は…

大馬鹿な子が殺し屋専用レストランで働く話 - ダイナー 平山夢明

運転するだけで30万円の裏バイト中、ヤクザにとっ捕まって拷問を食らい、墓穴を掘ってさあ死ぬかの間一髪で助かるオオバカナコちゃんが主役。シェフも客も変なのしかいないので途中まで楽しく読めたんだけど、アレッ?みたいな流れになってちょこんと風呂敷…

怒羅権と私 ~創設期メンバーの怒りと悲しみの半生

近頃の図書館の品揃えには目を見張るものがある。有名半グレ集団の初期メンバーの半自伝。本人がちゃんと書いたのかもしれないが、インタビューを文字に起こしたような編集感満載の臨場感のない淡々とした文章で自身の出目から逮捕、出所後から現在までが語…

魔界都市〈新宿〉 - 菊地秀行

自分でも意外だが、なんと初菊地秀行。有名な作家だし、菊地秀行が原作のアニメですら数作観たことがあったが(YouTubeでだが)今まで一度も手に取らなかったのは、内容が漫画のようなものだと知っていたからかもしれない。1982年に今作でデビューということ…

毎月28日は鶏の日パックが食べたくなる - カーネルサンダース自伝

時々(月一ペース)無性に食いたくなるのがケンタッキーフライドチキン。前にホームページにカーネルおじさんの自伝がpdfであったのでDLしていて、つい最近読んだ。(現在はDL不可)料理のレシピ集から始まってKFCを売却するまでの山あり谷ありの物語。ここ…

ライ麦の再来と言われた青春小説 - ウォールフラワー

本を人に勧めたくなることはほぼないが、この本はいろんな人に読んで欲しいと思える。小説ならではのパーソナルな感覚は映像にすると消えていく種類のもので、評価の高い映画の方はまだ観ていない。物語は1991年から92年が舞台となった書簡風の小説。語りか…

逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録 - 市橋達也

アクティブな犯罪者の代表ともいえる市橋達也の逃亡記。令和現在よりも街にカメラの数が少なく、人が動画を撮ることもずっと少ないころの話ではあるのだけど、意外とフラフラしてても捕まらないもんだなぁ、という感想。事件が起こった行徳は、インド人をは…

怪しいアジアの暗黒食生活 - クローン黒沢+明日香翔

いっときアジア関連でよく見かけたクローン黒沢。これまで雑誌に載ったルポやエッセイは読んだことがあったが、単行本を手にするのは今回が初めて。検索すると現在も活動してるんだな。今作は共著となっており、山師丸出しの明日香翔が話す(書いた)内容を…

サリンジャー物語 - ライ麦畑の反逆児

サリンジャーの作家デビュー前から引退までを描いた作品。チャップリンに女を取られたり、戦争で心をやられたり、といったエピソードは知らなかった。もし、チャップリンにウーナ・オニールを取られなかったらサリンジャーはもっと明るい人生を歩んでいたの…

ルポ西成七十八日間ドヤ街生活 - 國友公司

良い大学を卒業した20代半ばのモラトリアムな青年が西成で78日ウロウロするだけの話。決して広くはない街で、個人を特定できそうな情報を出すのは大丈夫なのだろうかと心配になるものの、作者本人にはもっと体を張って欲しかったというのは酷だろうか?西成…

もうひとつの『異邦人』ムルソー再捜査 - カメル・ダーヴド

これはアイデア賞。小説の書き出しから 今日、マーはまだ生きている。ときたもんだ。カミュの異邦人で、ムルソーが殺したアラブ人の弟が主役という設定はちょっと卑怯すぎる。異邦人が好きな読者なら気になってしまうだろう。しかし、内容はカミュの転落を意…

ゼロ・トレランス - マラボゥストーク - アーヴィン・ウェルシュ

名作トレインスポッティングのつぎに発表された長編小説。レイプおよびセカンドレイプを取り扱った痛ましい作品。ベグビーの相棒であるレクソが極悪なサイコぶりを発揮し、胸糞の悪い場面作りに貢献している。今作は、もしウェルシュ作品の人気投票があった…

生誕祭 - 馳星周 第130回直木賞候補作

バブル期を舞台にした成金たちの狂騒と騙しあい。鬱屈した日々を送るディスコの黒服(21歳男)が、金の亡者と化した幼馴染の元カノと再会し、物語は動きだす。頭から尾まで、金とセックスと嘘の話にまみれている。他には酒と暴力と数々のブランド品。ここま…

独りぼっちの主役が好きな人へ - ブッチャーボーイ - パトリック・マッケイブ著 矢口誠 訳

1960年代のアイルランドを舞台にした青春小説。語り手であるオッサンが10代前半当時の自分になりきり、モーレツな勢いで過去を汚言症さながらの罵詈雑言を用いて喋りまくるスタイル。『ライ麦畑でつかまえて』『ブルックリン最終出口』『時計仕掛けのオレン…

凶悪―ある死刑囚の告発―「新潮45」編集部

死の錬金術師 VS 大前田の殺し屋 !死刑判決を受けたヤクザの元組長が、復讐のために共犯者(通称 先生)の悪行をぶちまける話。ノンフィクションというのが信じられないくらい劇的で入り組んだ展開を見せてくれる。話マシマシ盛り盛りのヤンキーのなれの果…

サッカーの応援はセックスの代用品である - フーリガン戦記 - ビル・ビュフォード

フーリガンが激しく暴れまくっていた時代、マンチェスターユナイテッド等の非公認ファンクラブに同行したアメリカ人ライターが、イングランドの若者たちの無軌道なご乱行の数々(飲酒、暴力、強盗)を記録した本。この本ではフーリガンは、熱狂的なサッカー…

贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争 - 吉田 喜重

これはなんとも奇妙な本だ。ルドルフ・ヘスの数奇極まる人生の前半を年表の如くこと細かに並び立て、後半の囚人生活を甘美な回想を含めた作者の主観で補完するというもの。ナチスの誕生と隆盛を扱っていても血生臭さはなくその点は肩透かしを食った。どこま…

M.チクセントミハイ - フロー体験入門―楽しみと創造の心理学

何の本だったか、集中力がない人はいないと読んだことがある。筆者曰く、怠惰な人でも漫画やゲームや恋愛であれば時間を忘れて夢中になるから。なるほど、言われてみればそうだ。この本は沢山の例を出しながらフロー状態の解説を行ってくれる。半ば自己啓発…

時計仕掛けのオレンジ[完全版] - アンソニー・バージェス

久々に読んだ。通常版とあわせて四回目かな?キューブリックのスタイリッシュな映画も超好きで、繰り返し繰り返し観たものだけど、よりブラックで物語に沈溺できる小説も味わい深くて素敵だ。何より、原作の主人公アレックスが読み手に話しかけてくる軽妙な…

神は銃弾 - ボストン・テラン

かなり久しぶりに再読。カッコ良すぎるタイトルに惹かれて買ったんだっけ。元妻を殺され、娘を誘拐された警官が主人公。復讐に燃える戦闘マシーンと化すわけだけど、一応ヒロインらしい相方と、敵役の大ボスの方がキャラ的にはずっと魅力的だったりする。乾…

黒人を普通にニガーと呼んでいた頃の古き良き物語 - ハックルベリー・フィンの冒険 マーク・トウェイン

トムソーヤの相棒のホームレス少年。アニメしか知らなければハックのイメージはこんなものだろう。この本ではハックが主役であり、物語は彼の一人称で語られている。牧歌的な語り口で殺人などの凄惨な場面ですらあっけないほど簡素な言葉でつむぐ。行動や思…

冷酷 座間9人殺害事件 - 小野 一光

金目当てから強姦目当てにシフトした稀代の殺人鬼 白石隆浩。欲望を満たすために短期間(二ヶ月)で九人を殺めて解体したというのはちょっと考えられないペースだ。本の前半は面会したライターとのやりとりがメイン、後半は裁判の顛末が書かれている。ライタ…

もはやほとんど振り返られることのない昭和の怪物 - 毒舌 身の上相談 - 今東光

天台宗大僧正、瀬戸内寂聴の師匠、谷崎潤一郎の弟子、不純異性交遊で中学を二度中退、宇野千代の元カレ、川端康成の親友。森鴎外、夏目漱石とも面識あり。仲間の芥川龍之介の自殺をきっかけに仏門へ。幼少期から喧嘩三昧で力道山にも一目置かれる戦闘力etc………

アーヴィン・ウェルシュ - シークレット・オブ・ベッドルーム

再々再読。作家としての円熟味を感じさせる作品。これまでの物語と比べると、ドラッグと暴力よりもアルコールと恋愛の比重が高い。主人公は嫌なやつではあるけど周りからは好かれているイケメンキャラクターなのも珍しい。対極においたライバルキャラはどう…

イタコ芸人の息子が語る - 幸福の科学との訣別 私の父は大川隆法だった - 宏洋

新興宗教の教祖やその家族が欲にまみれた贅沢な生活をしているのはよくあることなのだろう。この本もその手の生臭い話が頻繁にでてくる。親父のベストセラーのカラクリ、幸福実現党の実態、二世信者の女優の話、総裁と副総裁の離婚話などなど極めてワイドシ…