スターリン時代の強制収容所(ラーゲリ)の一日を描いた作品 - イワン・デニソビッチの一日

再読。最初に読んだのが18歳の時だからずいぶんと久しぶりだ。ドストエフスキー死の家の記録よりポップな印象を受けるのは舞台が現代により近いためか。

他の刑務所モノでもそうだが、作品でとりわけ面白いのは食事をとる場面だ。セコさ、貪欲さ、高揚感が伝わってくるのだな。パンはともかく、烏麦や魚の骨、野菜の切れ端がわずかに入ったスープはまったく旨そうにみえないが、マイナス30度の世界で行われる労働のあとでは食わなきゃやっていけないのだろう。

収容所内の一日を描写しただけでドラマチックな展開はないが、ラストの数行によって評価がぐっと上がる稀有な本。