『お前が抱いてるのは狩猟本能が変形した恋愛感情だ』 擬人化した動物たちの青春群像劇となればファンシーな童話を想像しがちだが、この作品はもっと生臭い。 肉食獣と草食獣が共存している時点で、もはや普通ではないのだが……最初に学校で暴力的な事件が発生する。さらには主人公たちは演劇部に所属しているという二重三重の心理的な罠が張り巡らされている。この導入部は心憎いばかりだ。今後の展開が気になるに決まってる! そして、欠陥のある主役とパーフェクトな上級生と思いきや……実は……この設定が、対比が、より意匠を凝らす結果となり、作品に深みを与えている。 わざとらしい謎かけが随所に出てくるのもメタファーをミスリードさせるようで作者の思惑にはまってしまっている快感に気づいて頬がゆるむ。 キャラクターを人間に置き換えたとしても寓話としての物語は成立するし、時代設定を現代に置き換えてもそれなりに楽しめる。なぜ擬人化した動物たちの物語に直球のBEASTARSと命名したのだろう? これは最終回まで読むよりほかに選択肢はない。